子どもが何を勧めても動いてくれないとき

不登校Q&A

Q. 何を提案しても子どもが動いてくれません。手詰まり状態で、これからどうしたらいいのかわかりません。

A. 動かないときはエネルギーが落ちている状態です。まずは子どものエネルギーがたまるのを待ちましょう。

どんなに働きかけても子どもが動かないとき

何をしても子どもが動かないことはよくある

教室が無理なら別室登校へ、学校が無理ならせめて勉強はしてほしい、元気が出ないならカウンセリングや病院に行ってほしい、不登校でも行ける通信制高校の見学に行ってほしい…。保護者の方が何を勧めてもどんなに働きかけても子どもが動こうとしないことがあります。

始めはとにかく「学校へ」という気持ちでいる保護者の方も、子どもがどうしても行けない様子を見ていると「ひとまず学校は休んでいいから……」という気持ちになってくるものです。

でも、このままではいけない、と思って、教育相談・カウンセリング・医療機関・フリースクール・転校・編入……など、さまざまな提案をしたくなってきます。

そして、実際に子どもに対していろいろな提案をするのですが、何を言っても「無理」「イヤだ」という返事しか返ってこない……。

手詰まり状態でどうしていいのかわからない、という状況になり、それが保護者をとても悩ませます。

保護者が焦る理由

「このままではいけない」という気持ち

不登校になったばかりのころの保護者は、とにかく早く学校に戻ってほしいという気持ちが強く、「このままではいけない」という焦りがあります。

なんとか現状を変えたくて焦りが強まります。

タイムリミットがあると思う

受験をしなければならない、転校や編入の手続き締切が迫っている……いついつまでに、何をしなければならないとタイムリミットがあるケースです。

時間に追われているとどうしても焦りが募ります。

子どもが動かない理由とは 動きたくても動けない状態

「動かないときは動かない」=「動けないときは動けない」

ただ、私自身の経験からも、多くの方からの相談内容からも言えるのは

「動かないときは動かない」

という結論です。

身も蓋もない……、けど、これが現実です。

子ども側から言えば「動けないときは動けない」ともいえます。自分の意志で動かないのではなく、動きたくても動けないのです。

相当エネルギーが落ちている状態だと認識する

子どもが何を提案しても動かない・動けないときは、エネルギーが相当落ちている状態と考えてもらっていいと思います。

さまざまなことに心をすり減らし、消耗し切っているのです。ガソリンがないと車が動かないのと同じで、エネルギーがないから動き出せないのです。

大人からすると、気楽そうに見えたり開き直ったりしているように見えることもありますが、たいていの場合子どもはとても苦しんでいて、悩んで悩んで結局どういう態度をとっていいのかわからなくなっています。

自己肯定感が下がっているので自信が持てない

不登校になっている子は、多くの場合自己肯定感が下がり切った状態にあります。

学校に行けない自分、やるべきことができない自分、親の期待に応えられない自分……そういう自分をじっと見つめて、家にいて時間があるだけに自分で自分を苦しめ続けています。

自己肯定感が上がっていかないと、なかなか動き出すことはできません。

選択肢を知らないので絶望している

多くの子どもにとって学校は唯一の社会です。その社会で存在できないということで自分には存在価値がないと思い込んでしまい、絶望しています。

フリースクールや通信制高校を提案しても、それを受け入れられない子がいるのはそのためです。

学校で生きている自分こそが本当の自分であり、フリースクールみたいな特別な場に行く自分は落ちこぼれだ、価値がないんだ、などと思っています。

大人が思うより、子どもはずっと狭い世界で生きています。この辺りも、大人と子どもの認識にギャップが起こりやすい一つの原因だと考えられます。

無理やり連れ出すのは逆効果

無理に連れ出すとそのつど気持ちが消耗する

最近は不登校の子が増えてきているせいか、無理やり引っ張って学校へ引きずっていくような保護者の方はあまり見ませんが、基本的に「無理に連れていく」というのはNGです。

大人でも行きたくないのに無理やり誰かに連れて行かれたら、つらい気持ちになるのではないでしょうか。

なぜ、「子どもならいい」と思ってしまうのでしょうか?

大人だって子どもだって、嫌なものは嫌なのです。嫌なことをさせられたら、とても心が傷ついて立ち直るのが難しくなるものです。

たとえ子どもが言うことを聞いても意味はない

保護者の気持ちを汲んで、なんとかがんばってカウンセリングなどに行く子もいます。不登校になる子は、人の気持ちに敏感でやさしい子が多く、がまんして親の希望を優先することがあります。

ただ、子どもはそのつど激しく消耗しています。そうすると、次に動き出す元気が枯渇してしまうのです。骨折しているのに無理に歩いて、余計症状が悪くなるのと同じような状態です。

「行きたくない」というときの子どもの気持ち

じっとすることで自分を守っている

子どもはつらい気持ちに耐えて耐えて、耐えきれなくなって学校へ行けなくなっています。

今までがんばってきた分、じっとすることで自分自身を守っています。けがをしたら、安静にするのと同じことといえるでしょう。

知らないところへ行く恐怖感

子どもは傷つくことをとても怖がっています。学校でたくさん傷ついてきたうえ、知らないところに行ってまた傷つけられたらどうしよう、という不安感でいっぱいです。

傷つく可能性があるようなところには、絶対に行きたくないのです。

動けない自分を責めている

子ども学校へ行けなくなった自分を責めています。不登校になるとゲームやYouTubeに没頭しがちなのは、そんな現実を一時でも忘れたいからです。

親から提案されたことを受け入れられないことが重なると、何もできない自分をさらに責めてしまいます。

保護者に迷惑をかけていることが心苦しい

不登校の子は、繊細で感受性の強い子が多く、自分が学校へ行かないことで保護者の方が悩んだり苦しんだりしていることを敏感に感じ取っています。

自分が迷惑をかけていると思い、保護者に対して申し訳ない気持ちで肩身の狭い思いをしています。

余計な負荷をかけずに見守ることの大切さ

自分で「やろう」と思わない限り動き出せない

大人が思う以上に子どもは「不登校」という状況に苦しんでいます。よかれと思って提案することも、度重なることで子どもを追い込んでしまうこともあります。

基本的に、何事も自分で「やろう」という気にならないと、子どもは動きません。周囲がどんなに「これがいい」と勧めても、本人が「いい」と思わなければ、子どもにとって何の意味もないのです。

特に、不登校で気力が落ちているときに「何かさせよう」というのは、あまりに無理があります。

保護者の方ができること

子どもが安心して過ごせる環境を整える

では、保護者はいったい何をしたらよいのでしょうか。

まずは、「待つ」ことです。

手を変え品を変えいろいろなものを進める前に、子どもが安心して過ごせる環境を整えてください。「家の中は完全な安全基地だ」ということを子どもに理解してもらうことが、何よりも大切です。

子どもの様子を見ながらですが、ひとまず以下の話はしないようにします。

・学校の話

・進路の話

・勉強や成績の話

機嫌がいいときに情報を与える

子どもの機嫌がいいときに、教育相談やカウンセリング、フリースクールや通信制高校の話など、不登校で困っている状況をサポートしてくれるところがある、という情報を与えます。

ポイントは「ここに行くといいよ」という言い方ではなく「こういうところもある」という言い方です。

パンフレットなどを置いておくだけでもOKです。勧めるのではなく、情報だけ与える、というイメージです。

いろいろな情報はこまめに集めておく

子どもが何か聞いてきたとき、すぐ答えられるよう日頃から不登校に関する情報は積極的に集めておきましょう。

一番良質な情報源となるのは地元にある「不登校の親の会」です。

不登校の親の会は、地元から行きやすい学校やフリースクール、相談機関などさまざまな情報を持っています。

これからのことや進路については子どもの発信を待つ

保護者の方から何かを勧めるのではなく、子どもがこれからのことや進路について話をしてきたら、そのときに話し合うのがベストです。

このタイミングなら、いろいろなサポートがあることを子どもも前向きに受け入れる可能性があります。

無理なく勉強するにはどうしたらいいか、どういう学校に進学するかなど、現実的なことを話し合うよい機会となります。

焦らず、少し長い目で見ること

リミットと思えばリミットになる

子どもが動かない期間は個人個人でさまざまなため、これをやったらすぐ動く、とは言えない面があります。

ただ、今の世の中は、保護者世代が小中高生だったころとは違います。やり直しはいくらでも効くし、回り道をしても仕事に就くことは可能です。「すぐ転校しなきゃ」「勉強だけはしなきゃ」と、焦る必要はありません。

転入の時期や編入の時期、受験の時期などは「間に合わないかもしれないな」と思っておくことです。

大げさ言えば、覚悟するという感じでしょうか。ただ、そんなに大げさに考える必要はありません。これが、この子のペースなんだ、と思えばいいのです。

子どもの力を信じて待つこともサポートの一つ

私自身は

「うちの子どもたちは、人とは違う人生を歩んでいるんだな。これがこの子たちの個性なんだな」と思って、息子たちを見ています。

保護者の方には、以下のことを心がけていただければと思います。

・子どもの成長する力を信じること

・子どものにエネルギーを蓄えるサポートをすること

・適切な情報を持つこと

どうぞ焦らず、気長にやっていきましょう^^

タイトルとURLをコピーしました