東京都立昼夜間定時制高校「荻窪高校」の取り組みを伺いました
お話をしてくれた瓦田尚先生について
世田谷区不登校の親の会主催の講演会・交流会で、東京都立昼夜間定時制「荻窪高校」の瓦田尚先生のお話を伺ってきました。
瓦田先生は、私が主催している「ミモザの花~子どもの不登校を考える会」の昨秋イベントでもご講演いただきました。
さまざまなメディアで取材を受けたり、情報発信をされたりしています。
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月刊特別支援教育研究 2・3月号「高校通級の極み」
石澤奨学会 会報
読売新聞、共同通信の取材記事 (通級関係)
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今回は、都立高校入試発表の前日、というタイミングでいろいろなお話が聞けてとても勉強になりました。
日本最大級!オーディオブックなら – audiobook.jp当日参加者から出た先生への質問
先生に聞いてみたいこととして、参加者からは以下のような質問がありました。
・中学不登校でも行けるいろいろな高校について知りたい
・荻窪高校の不登校支援について
・内申書は選考にどの程度影響するのか
・発達に偏りのある子の支援について
・都立高校の転入と編入とは
それぞれの心配事について、先生から順を追ってお話いただきました。
都立高校の受験について 定数内なら入れる可能性があることや内申書のこと
都立高校は「定数内不合格」をできるだけ出さないようにしている
近年、私立高校への選択肢が広がったことで都立高校の定員割れが続いているそうです。ただ都立高校では、定員に達していない場合、できるだけ不合格にしないようにしているとのこと。
広く都民の高校進学の機会を保障したい、という都立高校の姿勢が感じられます。
倍率を見て学校を選ぶことも視野に入れるとよい
不登校の子の受け入れ校としてスタートした東京都の「チャレンジスクール」は、不登校で困っている子以外の受験生も増えてしまい、倍率が高いという問題があります。
実際、チャレンジスクールに合格できない不登校の子が、毎年出るのが現実です。
でも、倍率が低い学校を選べば合格することができる、ということをよく知っていれば選択肢が広がります。定員に満たなければ、二次募集・三次募集もあります。こんなふうに、都立高校には何度もチャンスがあるのです。
受験する側としては、不合格になるとがっかりしてしまい(特に子どもはショックを受けがち)、なかなか都立の後期募集・二次募集・三次募集に気持ちが向かないものですが、このことをもっともっと、広く知ってほしいな、と思います。
内申書を気にしすぎなくても大丈夫
内申書については、基本的には学力検査が7割・内申書が3割となっていますが、実際には内申書を詳細に見ることはあまりないとのこと。
その意味で、内申書を気にしすぎることはないようです。
成績表は「オール1」より「斜線」の方がよい
ただ、注意点として、成績表については「オール1」よりも「斜線」の方がよいそうです。オール1だと、その子の評価が「1」と思われてしまうからです。斜線の場合、何か事情があって成績がついていないと判断されるようです。
私も長男が高校受験をするときにこの話を初めて聞き、オール斜線にしてもらいました。オール斜線の成績表は見た目けっこうショッキングなのですが、都立高校を受験するときには、やはりこちらの方がよいようです。
また、1や2などと斜線が混在している場合は、すべて「斜線」という判断になるとのことでした。
荻窪高校の「総合支援部」について
都立高校で初の試みをいろいろ行っている荻窪高校
「誰も置き去りにしない」セーフティネットとしての役割・「相談」から積極的な「支援」へ・外国ルーツの生徒の支援など、荻窪高校には「総合支援部」というものが設置されています。
瓦田先生は、自立支援担当・特別支援教育コーディネーターという役割を担い、困りごとを抱える生徒や家庭のサポートをしています。
高校通級の設置 こちらも新しい取り組み
また、高校では珍しい「通級」が設置されているのも、荻窪高校の大きな特徴です。不登校の中には、発達障害やグレーゾーンの子も多いので、ここがケアされているのはとても重要だと思います。
これには、東京都の教育委員会が近年予算を増やしていることが影響しているそうです。東京都教育委員会、意識が高くなっているようでいい感じです。
荻窪高校の通級の取り組みについて詳しく知りたい方は、下記の雑誌に詳細がレポートされています。
月刊特別支援教育研究 2・3月号「高校通級の極み」
高校に入るとサポートが途切れてしまう問題に、荻窪高校の取り組みが役立つはず
中学までは区のサポートがいくつかあるのですが、高校になると急にサポートが途切れてしまうことは、とても気になっているところです。
「ミモザの花」でも、杉並区の不登校担当課に中学から高校への橋渡し的なことをしてほしいと何年も前からお願いしているのですが、なかなか実現は難しいものです。
高校自体がこのようなサポートをしてくれるのが一番だと思うので、荻窪高校の活動が広がっていくことを心から願います。
都立高校の転入・編入について
都立高校への転入
現在いる高校から間をあけずに、別の都立高校に転入するということもできます。
転入のタイミングは、1学期、2学期、3学期です。
都立高校への編入
一方、今いる高校をいったん退学して他の高校へ入り直すのが編入です。
都立高校の編入は4月のタイミングのみとなります。
全日制(学年制)高校で単位が足りず進級できない場合は、いったんその高校を退学して編入するという形になります。
もちろん、もとの学校にいて留年することもできるのですが、本人も気まずいし高校の先生方も転校を勧めることが多いようです。
(参考)
都立高等学校の転学・編入学について
東京都教育委員会の積極的な姿勢
先生方が異動しても体制は変わらない
昨秋、瓦田先生のお話を伺って、「すごいな、荻窪高校!(ハイクラス転職?)」と、思ったものの、瓦田先生が異動になったらまた元に戻っちゃうのかも……という不安が正直ありました。
杉並区内の小中学校で、校長先生が変わったとたんに不登校への対応が変わってしまう、という状況を何度も見てきているので、若干トラウマになってます……。
でも、荻窪高校での取り組みは、「グランドデザイン」として先生が変わっても制度は残すようにするとのことです。
心強い!
いい感じの東京都教育委員会の力も借りて、荻窪高校の取り組みがすべての高校に行きわたることを心から願っています。